ふくらはぎに痛みを感じたら冷やす?温める?ケガの原因と対処法 Vol.2
公開日:突然ふくらはぎが痛む。。。
前回のコラムではケガの種類とメカニズム、応急処置について解説しました。
この記事では、3種類のふくらはぎの痛みの原因と対処法について解説していきます。
執筆・監修者
村木 良博
(有)ケアステーション 代表取締役 スーパーバイザー
(財)日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー マスター(JSPO-ATマスター)
【役員】
(公財)日本オリンピック委員会 強化スタッフ
(公財)日本テニス協会 ナショナルチーム委員会
(公財)日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー部会員
(社団)日本アスレティックトレーニング学会評議員
元日本バスケットボール協会医科学研究部員
元日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部会長
【講師】
花田学園アスレティックトレーナー専攻科非常勤講師
東京有明医療大学 非常勤講師
東京医療福祉専門学校教員養成科 非常勤講師
目次
【ふくらはぎの痛み①】肉ばなれの原因と対処法
運動において、ふくらはぎの主なトラブルは、肉ばなれ、アキレス腱断裂、疲労骨折が考えられます。またケガではないがよくみられる症状として、ふくらはぎのケイレン、いわゆる「こむら返り」や単なる筋肉痛などもあげられます。
トラブルで最も多いのが、肉ばなれです。
ふくらはぎの下腿部後面にある下腿三頭筋のうち、外側にある腓腹筋の内側の筋肉の盛り上がる部分(筋肉と腱のつなぎめで一番力がかかるところ)に、肉ばなれは多く発生します。
地面を蹴って体を移動させる、止まる、ジャンプする、着地する、切り返す等、運動をする際の基本となるさまざまな動きのなかで、負荷がこの部位にかかってきます。
さらに、2つの関節をまたぐ二関節筋であること、また筋が収縮している状況でさらに伸ばされる外力(遠心性収縮EccentricContraction)が加わると、筋と腱のつなぎめ(筋腱移行部:硬いところと柔らかいところのつなぎめ)部分に、引きちぎられるような力が加わることで、筋繊維に損傷を起こします。
これが、肉ばなれといわれています。
たとえば、狭いコートのなかで瞬時なダッシュ、ジャンプ、着地、ターン、サーブの着地などを繰り返すテニスでは、肉ばなれのケガが多く発生していることから「テニスレッグ」という名前がつけられているほどです。
【ふくらはぎの痛み②】アキレス腱断裂の原因と対処法
アキレス腱の断裂もいわば肉ばなれに属します。発生する状況や原因など、ふくらはぎの肉ばなれに共通しています。
アキレス腱は、下腿三頭筋が腱となって踵に付く部分で、ここが切れてしまうとつま先で地面を蹴ることができなくなります。
アキレス腱の断裂は、肉ばなれと同じ状況で発生します。
たとえば止まっている状態から急に前進・後進運動やジャンプの着地の場面で多く発生がみられます。
アキレス腱を断裂してしまったときの応急処置
アキレス腱が切れる際、後ろから誰かに蹴られたり、ボールが当たるなどの衝撃を感じ、「パチン」という音を聞くことがあります。
「パチン」という音は、ゴムなどを限界までに引っ張り、それが切れたときのような衝撃音に似ています。
この場合、立つことはできますが、地面を蹴ることができなくなります。
筋や腱の弱化や運動不足などの要因もありますが、20~30代の選手にも多くみられることから、環境的、個体的などさまざまな要因が考えられます。
アキレス腱断裂も肉ばなれ同様、急性外傷にあたり、発生した際は医療機関での診断・治療が必要です。
応急処置としては、基本はRICE処置ですが、アキレス腱が伸ばされないように固定することも必要です。
また、患部に荷重がかからないように、松葉杖や車いすを使っての生活が必要になります。
【ふくらはぎの痛み③】ケイレンの原因と対処法
ケガではありませんが、ふくらはぎのケイレン、いわゆる「こむら返り」も運動中によく起きるふくらはぎのトラブルです。運動性の筋ケイレンは、生理的、身体的、心理的、環境的などさまざまな要因が考えられます。
筋の収縮に関係する調整機能のバランスが崩れ、運動神経が異常興奮し、筋が連続した自動収縮する状態といわれています。
つまり、運動中に筋肉が勝手に強く収縮したままの状態になり、運動できなくなる現象です。
骨格筋であれば、どの部位の筋肉でも起こりますが、運動量の多いふくらはぎによく起きます。
運動できなくなるほど苦しい状態なので「ケガではないか?」と思われがちですが、体力消耗の結果によって起きる現象とされており、ケガには含まれません。
しかし、ケイレンと肉ばなれの症状はよく似ています。
どちらも運動ができなくなりますが、肉ばなれは、痛みとともに腫れや熱感があり筋肉を収縮させると痛みが強く出ますが、ケイレンは、勝手に筋肉が収縮をしつづけて運動ができない状態です。
ケイレンが引き起こされる要因は、さまざまです。
生理的要因 |
脱水状態(水分・電解質・糖質不足)、酸素欠乏、疲労物質の蓄積、生活の不摂生など |
身体的要因 |
睡眠不足、筋疲労、急激な強運動、準備不足、柔軟性の低下など |
環境的要因 |
気温、湿度、服装、サーフェイス、天候など |
そのほかに精神的な不安や緊張、ストレスなどの精神的な要因も加わり、ケイレンはそれぞれの要因が重なって起きる(マルチファクター)現象です。
そのため、ケイレンを防ぐには、水分や電解質、栄養、エネルギーを十分に補給し、筋を柔軟に保ち、体調を強い衝撃に耐えられる強い体力を蓄えることが重要です。
しかし、マルチファクターであるがゆえに、決定的な予防方法がまだありません。
今、できる対策を十分に実施することが必要です。
ケイレンが起きたときの応急処置
ケイレンを起きた場合、強い自動収縮を起こしている筋肉をゆっくりと伸ばし、冷えている皮膚や筋を温めることで回復することがあります。しかし、ケイレンを引き起こす要因が残存しているうちは、再び運動に戻るとケイレンを再発してしまうことが多くあり、回復には時間を要する場合が多いです。
ケイレン直後は痛みがあればアイシングで安静にし、運動制限を行います。
痛みや自動収縮が収まった場合、血行をよくし回復物質が多く含まれた栄養分を取り入れ、新鮮な血液を循環させ、回復を促進します。
その後、お風呂などで患部を温め、マッサージやストレッチなどで循環を促進し、筋肉を柔軟に保ちます。
また、脱水症状でもケイレンが引き起こされる要因となるため、スポーツドリンク等で水分や電解質を補給してください。そうすることで回復が促進されます。
歩いても痛みや違和感がなければ、すぐに元の運動には戻らず、徐々に強度を増やしてください。
歩く、走る、跳ぶなどの衝撃に耐えられるようになってから、元の運動に戻るように心がけてください。
ケイレンは寝ているときにも起きる!?
運動中の筋ケイレン以外に、就寝時にもケイレンを起こす場合があります。夏場に多くみられますが、水分と電解質不足、冷えなどが原因と考えられています。
就寝前に水分と電解質を補給することをおすすめしますが、ほかの病気が潜在することも考えられますので、繰り返すことがあれば医療機関を受診するようにしてください。
運動選手によくみられるシンスプリント(Shin-Splints)障害とは?
シン(Shin)とは、「脛(すね)」のこと。スプリント(Splints)は「副木」つまり「副木のように固くなったスネ」という意味で、このような俗称がついている障害です。
厳密に、すねの内側の痛みで、ふくらはぎのトラブルとはいえませんが、ふくらはぎの硬さに起因するものも多く、下腿部のトラブルとしてよくみられるケガです。
ランナー、ダンサーなど、幅広いスポーツ選手にみられ、運動でスネの内側にある後脛骨筋がけん引や擦れによって下腿内側(スネの内側)に炎症を来たし、強い痛みが出るものです。
専門的には「過労性骨膜炎」「後脛骨症候群」「脛骨内側ストレス症候群」などの傷病名がつけられています。
発生メカニズムや要因にはさまざまですが、体重の増加、運動強度の増加、筋の柔軟性の低下、アライメントなど特に偏平足や脛の湾曲など体に関する要因と、運動する地面(サーフェイス)の硬さ、シューズなどの環境、用具など外的環境の要因が重なって引き起こされることがあります。
シンスプリントの対処法
肉ばなれ、アキレス腱断裂などの急性外傷とは異なり、シンスプリントは慢性外傷(障害)になります。慢性外傷によるケガの厄介なところは、小さな外力(刺激)が蓄積し、知らず知らずのうちに悪化してしまうこと。
また、痛みが出ても休めば痛みはひくものの、再び運動を始めると痛みがぶり返すことを繰り返しているうちに痛みが強くなり、運動できなくなります。
放置していると、脛骨の疲労骨折を招くこともあります。
対処法として、まず痛みの治療を優先し、運動制限やアイシングを行います。
初期の炎症症状が引いたら、加温し血行を促進、筋の柔軟性、筋力を取り戻すための訓練が必要です。
ふくらはぎのストレッチやセルフマッサージなどで柔軟性を取り戻し、ふくらはぎの筋肉を強くするためのエクササイズなどを行い、荷重に耐えられるようにしていきます。
初期のうちにしっかりと治し、運動に耐えられるようリハビリを積むことが大切です。
まとめ
① ケガの初期には痛み・腫れ・熱感をいかに早く抑えるために、RICE処置を行い、患部の保護をする
② 痛みや腫れが収まった状態(回復期)に入ると、血行をよくし修復物質が多く含まれた栄養分を取り入れ、新鮮な血液を痛めた部分に循環させ、回復・修復を促進します。
③ 回復期に冷やすのではなく、お風呂などで患部を温め、マッサージやストレッチなどで循環を促進し筋肉を柔らかく保ちます。
④ 歩いて痛みや違和感がなくても、元の運動にすぐに戻らずに、徐々に強度を増しながら歩く・走る・跳ぶなどの衝撃に耐えられる元の運動に戻るように心がける
⑤ 自重やチューブなどを使ったエクササイズで徐々に筋力を回復していく
⑥ 不完全なまま復帰をすると再発する可能性が高くなるので、しっかりと治すことが大切
⑦ 運動を開始する時は、患部を保護する目的で「ふくらはぎのサポーター」や「テーピング」などを使うことをおすすめ。
運動時の症状が軽減し、かつ保温や保護にもなりますのでとても有用です。
次回予告
日常的に使うことが多い部位「手首」についてみていきましょう。
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