ふくらはぎに痛みを感じたら冷やす?温める?ケガの原因と対処法 Vol.1
公開日:運動中に突然ふくらはぎが痛むという経験はありませんか。
ふくらはぎは、血液を心臓に戻す「筋ポンプ作用」という働きを持つため、「第2の心臓」とも呼ばれています。
痛みを放置していると時には取り返しのつかないケガに結びつくことも。
この記事では、ふくらはぎの痛みの主な原因や対処法について解説します。
執筆・監修者
村木 良博
(有)ケアステーション 代表取締役 スーパーバイザー
(財)日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー マスター(JSPO-ATマスター)
【役員】
(公財)日本オリンピック委員会 強化スタッフ
(公財)日本テニス協会 ナショナルチーム委員会
(公財)日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー部会員
(社団)日本アスレティックトレーニング学会評議員
元日本バスケットボール協会医科学研究部員
元日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部会長
【講師】
花田学園アスレティックトレーナー専攻科非常勤講師
東京有明医療大学 非常勤講師
東京医療福祉専門学校教員養成科 非常勤講師
目次
ケガには“外傷”と“障害”の2種類がある
ふくらはぎに痛みを感じる場合、痛みの症状次第では大きなケガにつながることもあります。
また、一般的にケガは、「急性外傷(外傷)」と「慢性外傷(障害)」の2種類に大別され、それぞれ対処方法が異なってきます。
正しい対処法を行うためにも、まずは「ケガ」について整理しましょう。
急性外傷(外傷)とは?
急性外傷の代表的なケガとして、骨折・脱臼・打撲・捻挫・肉ばなれなどがあげられます。瞬間的に大きな外力が体に加わり、骨、関節、筋肉が損傷されるケガで、次のような3つの特徴を持っています。
■急性外傷の特徴
① ケガをした状況や原因がはっきりしている
② 症状がすぐに出てくる
(受傷後ただちに急性期の症状である痛み、腫れ、局所の熱感、普通に動かすことができないなどの症状が現れる)
③ 変形や関節の不安定性がみられる
(打ったところや捻られたところが変形している、あるいは関節がぐらぐらしている)
急性外傷(外傷)の応急処置
受傷直後は、腫れなどの炎症症状がすぐにみられるため、「RICE処置」を施し、炎症症状を抑えます。■RICE処置とは
Rest:患部の安静
Ice:患部の冷却(氷や冷水を用い患部を冷やす)
Compression:患部の圧迫(包帯などで患部に圧迫を加える)
Elevation:患部の挙上(循環を制限するため心臓より高い位置に挙げる)
■RICE処置の方法
① 一連の行動を1回につき20~30分(冷たいという感覚がなくなるまで)継続
② いったん氷を外すが、圧迫と挙上は継続
③ 局所の熱や痛みが再度出てきたら、再び①の順でRICE処置を行います。
④ これらを24時間から72時間程度(初期の炎症症状である熱、腫れ、痛みなどがある程度なくなるまで)継続
慢性外傷(障害)とは?
慢性外傷は、比較的小さな外力(1回では損傷されないほどの外力)が繰り返し特定の部分に加わることで発症するケガのことです。■慢性外傷の特徴
① 発生した原因が自覚されにくい(いつケガをしたのかはっきりしない)
② 慢性的で弱い炎症症状が続く(わずかな痛みや、腫れが長く続く)
運動を少し休めば治癒(軽快)するが、運動を再開すると症状が再発することを繰り返し、長期間に炎症症状に至ることが多い。
代表的なものとしては、慢性的な腰痛、いつ起きたのか原因がわからない膝や肩などの痛みです。
慢性外傷(障害)の応急処置
処置方法として、身体の違和感や、弱い痛みなどが生じる場合は、それが悪化しないように一時的に冷却(アイシング)し、炎症症状を抑えます。その後、反対に加温(入浴や温水などで温める)にて循環を促進し、患部の回復を進めるようにしましょう。
このように急性外傷(外傷)と慢性外傷(障害)では、その対処法が異なるため、痛みがある場合、まずはどちらのケガなのかを判断することが大切です。
どのタイプのケガなのかを判断し、起きた原因を探ることでケガの原因を解消していくことが重要です。
“エコノミー症候群”もふくらはぎのトラブル
ふくらはぎにかかわるトラブルは、さまざまな要因が考えられます。運動中ではなく、動かないことで発症する"エコノミー症候群"も、ふくらはぎに関連するトラブルのひとつです。
ふくらはぎは、全身の血液循環を支える重要な筋肉群になり、ふくらはぎの筋肉は、地面を蹴って体を移動させる等、すべての運動でよく使われる筋肉です。
ふくらはぎを構成する代表的な筋肉には、腓腹筋とヒラメ筋があり、これを含めて「下腿三頭筋」と呼ばれています。
下腿三頭筋は、収縮することにより下に降りてきた血液を体の中心(心臓)に送り戻すポンプの役割をする重要な筋肉です。
これを「筋ポンプ作用」といいます。
そのため、運動不足などふくらはぎが動かなくなることで、全身の血液循環に影響を及ぼします。
例えば、飛行機での長距離移動で多く発症する「下腿深部静脈血栓症」いわゆる"エコノミー症候群"。
"エコノミー症候群"は、長時間、ふくらはぎの筋肉を動かさず、ふくらはぎの深いところにある静脈中の血の塊(血栓)ができ、血栓が剥がれ肺に達することで、肺塞栓症を発症する病気のきっかけになる事象です。
長時間運動不足が続く状況であれば、長距離バスやトラックの運転手、乗客にも発生することがあるといわれています。
このように動かないことが原因で発症してしまうトラブルの一方で、ふくらはぎは多くの運動で負荷がかかるため、急性のケガをしやすい部位でもあります。
次回予告
運動器(骨格筋、腱、関節など)のケガに焦点をあて、ふくらはぎの痛みについてみていきましょう。
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